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すべてが「現役」の村
千葉県立房総のむら(千葉県)
千葉県立房総のむら

 西の森の向こうにどんよりとした雲が広がり始めた。風が湿気を含んできたのがわかる。先ほどから急ぎ足で歩いてきた泥道は、畑のなかを突き抜けて、やがて1軒の農家の庭先をかすめる。軒からは唐辛子やにんにくがぶらさがっている。道を尋ねようと裏へまわる。かまどはグツグツと白い湯気を立て、脇の山積みにされた薪の上には、大きな冬瓜が無造作に放り投げてあった。
 さらに道を進むと火の見櫓が見えてきた。町は近い。「カンッ、カンッ」という鍛冶屋の音が聞こえてきて安心する。いつしか道は、街道の大きな通りになった。通りの両側にはめし屋や小間物屋、呉服屋などが立ち並んでいる。どうにか雨に降られずにすみそうだ。とりあえずそば屋で一息つこう。

千葉県立房総のむら ――という具合に、まるで街道を歩く旅人のような気分にさせてくれるのが、ここ「房総のむら」である。起伏に富んだ敷地のなかに、佐原の町並みを模した商家や上総、下総、安房の各農家が点在している。
千葉県立房総のむら  だがしかし、先ほど道を尋ねた農家も、街道の両側に並ぶ商家も、じつはホンモノではない。各種体験学習の使用に耐えるよう、階段を緩やかにしたり新建材を使ったりして、それらしく“再現”したものなのだ。屋根だってよく見ると、茅葺きならぬ鉄板葺きになっているものもある。
 そのようにして造られた各建物内では、川魚料理や紙漉き、竹細工作り、甲冑試着体験などができるようになっている。
千葉県立房総のむら  そう、「房総のむら」のコンセプトは“体験”なのだ。体験できるのは屋内だけにとどまらない。田んぼの稲も、地元の農協に横流しできるのでは?と思うほど立派な畑のキュウリや芋、アワ、ヒエ、らっきょうも、すべて“体験”できるのである。
 「米作り体験」は4月の種まき(豊作を祈願する「さなぶり」付き)に始まり、11月に千歯扱きで脱穀し俵に詰めるまでがセットになっている。落花生や菜種油、こんにゃく、納豆、味噌、醤油などを作る体験もある。
 もっともお手軽なのが「お茶を焙じる」とか「七味唐辛子作り」(ともに1体験100円)であろう。
千葉県立房総のむら  もちろん体験をしなくても、かたわらにあがりこんでなごむことができる。民家の板の間など、暑い時期にごろごろするのにうってつけだ。
 「保存」ということに縛られている民家園が多いのに対して、ここではかまどや囲炉裏、畑などがすべて機能している。いわば「現役」の村だ。その意味で、一番生きた展示をしている施設だといえる。
 千葉県立房総のむら
 ■住所 千葉県印旛郡栄町龍角寺1028
 ■TEL0476-95-3333
 ■開館 9:00〜16:30/月曜(祝日の場合は開園し、翌日休館)・祝日の翌日は休館
 ■入館料 300円
 ■交通 JR成田線安食駅からタクシー5分、またはJR成田線下総松崎駅より徒歩30分
 ※料理教室や甲冑試着体験、農業体験などは事前予約が必要

 ◆2004(平成16)年から隣接していた「千葉県立風土記の丘」と合併し、新「千葉県立房総のむら」になった。風土記ゾーンには復元古墳群や出土品の展示がある。なお、これらの「むら」では、料理をつくる“体験”はできるのだが、施設自体に食堂がない。お弁当持参で行くことをおすすめする。

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