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世界の味覚が楽しめる博物館
野外民族博物館リトルワールド(愛知県)
リトルワールド  世界の味覚が楽しめる――といってもデパートの物産売り場ではない。まして、最近はやりの食のテーマパークとやらいうものでもない。正真正銘の博物館である。
 その名も「野外民族博物館リトルワールド」

 園内には世界各地から集められた33棟の民家が展示されているのだが、ただの民家園と違うところは、各国のエスニック料理や軽食が、主立った民家で味わえるということである。
アルベロベッロの家  園内のレストランやカフェは6か所ほど。普通、民家園や博物館での飲食は御法度なのだが、ここでは復元民家の庭先などで食べられる所もあってうれしい。もちろん各レストランによって「国」が違うので、完全制覇しようと思えば6食はチャレンジしなければならない!?
 「韓国亭」でキムチラーメンをオーダーすると、じつに容赦のない辛さであった。しかし、この辛さがうまい。決して日本人向けに媚びてはいない本場の味で、身体がぽかぽかしてくる。さすが寒い地方の料理である。
 イタリア「アルベロベッロ」のテラスにあるイタリアンカフェでは、パスタやピザが味わえる。秋に行くとフランス「アルザス地方の家」でアルザスワインの「新酒ワインフェア」を開催していて、こういうタイムリーさがいい。
 インド「ケララ州の村」ではインド人のコックが作るカレーが、「アフリカ地域センター」のサファリプラザではワニやダチョウの肉が食べられる。
 なお、ここまで来て、どうしてもジャンキーなものが食べたいという向きには、野外ホールの隣で売られているハンバーガーやコーラをどうぞ。
気分はバリ島  食事のほかにもおやつや軽食などが売られているのがうれしい。各100〜300円程度で、地域性豊かなティータイムを楽しめる。
 シナモンが利いた「チャイ」や アボカドの混ざった「コピ」。これはアボカドのとろみをほのかに感じるコーヒー牛乳のようなもの。「インドネシア・コーヒー」はどろりとしていて、その上ずみをすする。

 いずれも現地の味なのだろうが、極めつけは、ネパールの「バター茶」。バターの原料は牛乳。お茶+バターで、まろやかそうな感じがする。
 ではいただきます……うわっ、まずい!もういっぱい!(古…)。
 とにかくしょっぱいのである。説明書きをよーく見ると、「お茶+バター+塩で作られ、現地の貴重な蛋白源で一日に何杯でも飲みます」とあった。この“塩”がくせ者だった。ネパールのような山岳地帯では、塩分補給に欠かせないのであろうが、ここ愛知の平地では一人一口でギブアップ。例えるなら砂糖抜きのミルクティーに海水を入れたような味か。人数分、頼まなくてよかったと思われる代物である。
 チャイやコピと非常に色が似ているので、1杯だけバター茶を混ぜ、♪もしもしカメよ〜などと歌いながら回し飲みすればロシアンルーレットの気分が楽しめよう!?
 このほか、台湾の飲茶や天然やしの実ジュースも味わえる。
リトルワールド  さて、おなかがいっぱいになったところでしっかり見ておきたいものがある。それは、これらの家屋は「それ風に造った土産物などを売る店」などではなく、学問的にもしっかりとした建築であるということだ(一部レストランなどは通常の建物)。
 「韓国の農家」はダム工事で水没する予定だったものを移築した。スマトラ「トバ・バタック族の家」は、第二次大戦後の1947年に建てられたものを移築しており、壁面にはオランダ軍と日本軍の戦いの様子も刻まれている。ネパールの復元「寺院」に至っては、現地から4名の大工を招いて竣工、さらに10名の絵師を招き、本堂内の仏画や曼陀羅を1年以上かけて完成させたという凝りようである。「バリ島貴族の家」も現地から大工や石工を招いて造り上げたものだ。インド「ケララ州の村」は標識やバス停、電柱までも現地から運んで、復元している。
 また、これら家屋をただ並べただけではなく、随所に、現地の地理や環境を意識した“演出”が施されているところが小粋だ。
 例えば、「石垣島の家」。屋根の上でシーサーが番をしているのはもちろんだが、ふと足下を見ると、砂利ではなくサンゴのかけらが敷き詰めてある。現地に忠実な演出である。
 「台湾の農家」は、前面に池、背後に山林を配した場所に建っているが、これは、現地では風水を意識した場所に建てるからである。門と正庁(玄関兼居間のような広間)を直線上からずらして配置してあるのも、悪霊は一直線にしか進めないと信じられていたためという。

 こんな調子で33棟も立ち並んで、いや、点在しているのである。端から見ていくとだんだん目移りしてくるし、足も棒になってくる。“食後の散歩”には十分すぎるほどのボリュームだ。
 主な民家では民族衣装のコスプレが楽しめる(1回300〜500円)し、そんなこんなでたっぷり1日がかりとなる。
 と、1日たっぷり楽しんだうえに、じつはまだ見るべきところが残っている(!)。入口の入場ゲートをくぐった左手にある「本館」である。
 この本館こそ、リトルワールドの理論的中枢をなしている施設で、世界約70カ国から収集した民族資料6000点が常設展示されているのである。
 館内は「食」「採集・狩猟」「農耕」「牧畜」「言語」「社会」「結婚」「死と葬式」「芸能」などの各コーナーに分かれ、これでもかといわんばかりに山積した資料が展示してある。圧巻は「価値(芸能・まつり・造形)」のコーナーで、アフリカの呪術やニューギニアの祖霊などの仮面が、大フロアにどーーっと並んでいる。映像資料も豊富で、随所に置かれた数十台のモニターによって、民族儀式や民族の道具の実際の使用方法を見ることができる。そのスケールとボリュームたるや大阪の国立民族学博物館に劣らないぐらいだ。
 これらの膨大な学術資料に裏付けされているからこそできた“小さな『世界』”である。学問的な検証に耐えうるべく造られたという緊張感が、この広大な敷地の中をぴしっと貫いているように感じる。そこが、ただ楽しませればいいというだけのテーマパークとは違う。
 奇しくもこのリトルワールドの開館は、日本最強最大と称される千葉県のテーマパークと同じ1983(昭和58)年である。夢とネズミがあふれる「おとぎの世界」も結構だが、学問にしっかり裏打ちされた「現実の世界」もまた楽しい。
  野外民族博物館リトルワールド
  ■住所 愛知県犬山市今井成沢90-48
  ■TEL0568-62-5611
  ■入園料 大人1600円
  ■交通 名古屋駅から名鉄急行で約35分、名鉄犬山駅下車後、バス20分

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