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そそり立つ、人間の欲望 多摩森林科学園(東京都) |
![]() 東京近郊の人にとって、高尾といえば、高尾山が遠足やハイキングの場所として有名だが、この多摩森林科学園は、高尾山とはJR中央線をはさんで反対の北側に位置している。 |
そのキャリアを遺憾なく発揮するのが入口を入ってすぐ左手にある第1樹木園だ。園内でもかなり古くからの樹木園で、歴史がある分、樹々がもうすっかり大きくなってしまっている。根元にプレートがかかっている。上を見上げる。 きれいに枝打ちされた幹ばかり目に入る。もっと上を見上げる。 まだ幹がずーっと続く。 のけぞるようにしてもっと上を見る。 やっと遥か上空の方に葉っぱがちらちらと揺れている。 立派に成長した巨木がいっぱいで、幹と根元だけしか視野に飛び込んでこないのだ。樹は上空で枝を広げ、下には鬱蒼として薄暗い道が続くだけなのである。キノコにでもなった気分だ。 園内こんな調子だったら、かなわんなぁ…と思っていたら、第2樹木園に至って、樹間がひらけ、明るくなってきてほっとする。 |
説明が前後したが、園内は第1〜3樹木園と試験林、そしてサクラ保存林のゾーンに大別される。サクラ保存林は国内の著名なサクラの遺伝子を保存するために設置されたもので、約250種1700本のサクラが植えられており、2月末から5月中旬まで花の絶えることがない。おかげで、4月には押すな押すなの大混雑となり、サクラ好きの日本人にはたまらないスポットになるのだが、新緑の季節の時はじつにひっそりとしている。葉桜の隙間から小さなサクランボが顔をのぞかせていた。 |
さて、サクラの季節以外での園内のおすすめはといえば、第3樹木園だ。林業用樹木の適応を調べる試験林だったために多種多様な樹木が植わっている。加えて、どこの深山幽谷かと思われるような暗い山道があるかと思うと、明るく開けた公園のような丘を薫風が走り抜けたりして、変化に富んだ光景が楽しめる。 明治期以降に移入されたダイオウショウやモミジバフウなどの外来種や、あまり見かけない樹木(屋久島と種子島にしか生えていないサルスベリなど)が、割と密度濃く植えられているのは、さすが林業試験場。 |
しかし、歩いているうちに、ふと、この樹木の来し方に思いをはせてしまうのである。ここは「植物園」ではない。「林業試験場」(現在は研究施設)である。だから、博物館のように、なんでもかんでも蒐集を目的として植えたわけではない。すべて、木材として利用価値があるかどうかを調べるための実験材料なのだ。 |
前出の“屋久島と種子島にしか生えていないサルスベリ”など、植えた人間は「こいつは床柱に使えるかもしれねぇ」とか考えていたはずである。また、台湾産のヒノキ(ベニヒ)や北米産の世界で一番背の高い木として知られるセンペルセコイアなどは、先人は「こいつが根付けば、スギ材やヒノキの代わりになる!」とか思いながら、苗を植えたことであろう。 この実験は、ものがものだけに、何十年もかかる気の長い実験だったはずである。 しかし、その木が生長して、実験結果がわかる頃には、住宅や林業をとりまく環境があまりにも変わりすぎてしまったのかもしれない。今、新築で国産木材の家自体が珍しいように。 |
そう考えながら、樹木のプレートの“自生地では樹高40m、直径1mをも超す大木に成長する。ここでの成長は気候の違いもあり劣っている”などというような記述を見ると、植木した人の「チッ」という舌打ちの音とともに、このひょろひょろした樹々からなんともいえない哀感が漂ってくるのである。今はひょろひょろしたこの木とて、植えられた時には、「いいカラダだな、大きくなってからが楽しみだぜ、ヒッヒッヒッ」とか言われながら植えられたはずである。 してみると、ここに植えられている樹々たちは、人間の欲望の結集なのだといえなくもない。 |
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多摩森林科学園 ■住所 東京都八王子市廿里町1833-81 ■開園時間 9:30〜16:00(月曜、年末年始休園。4月は無休) ■TEL042-661-0200 ■料金 大人300円 高校生以下50円(4月は100円増し) ■交通 JR中央線高尾駅北口より徒歩10分 ◆園内にある「森の科学館」(一番上の写真)では、樹木についての説明や園内に生息する小動物についての展示がある。 |
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