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富士山登頂記(但し都内) ―駅から5分歩いて富士山― |
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富士山といえば日本一のお山。しかし、富士山を名乗る山はそれだけではない。駅から歩いて5分で訪ねられる「お手軽富士山」もあるのだ。多摩川の川岸、品川の第一京浜、護国寺の境内…そんな所にも“富士山”はひっそりと立っていた。 かつて江戸中期から大正にかけて「富士講」という、富士山を信仰の対象に見立てた民間宗教が流行っていた。富士講にとっての最大のイベントは、もちろん富士登山だ。 しかし、当時のこととて、誰でもが登れるわけではなかった。登山自体の厳しさに加え、往復の道中のアプローチは、老人や女性、病弱な人などを拒んだのであった。 そんな行きたくても行けない人のためにと、富士講では神社の境内をはじめ、そこここに高さ3〜4mの築山をつくった。“山頂”には浅間神社の分体を、“登山路”には『一合目』『二合目』と彫り込んだ石碑を立てて、富士を演出した。もっと凝ったケースでは、築山の麓に富士五湖にみたてた池を掘ったり、ホンモノの富士から運んだ溶岩を配したりしたという。 そして江戸人たちは、弁当を手に近場の「富士」にお参りに行き、夏の富士山の山開きには、数mの築山に、仰々しく白装束を身をまとって“六根清浄”と唱えながら「山」を登っていったのである。 日頃、盆栽に野山を見、庭の小池を琵琶湖に見立てたりするような人々にとって、築山に富士の面影を見るのはたやすいことだったのだろう。 現在でも、盆栽はもとより、レアものフィギュアだジオラマだなどといっているわけで、日本人というのはきっと天性のミニチュア好きに相違ない。
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